フロント 2010年2月27日
朝焼けに染まる白銀の峰
冬の星座オリオンが、東南の空にシリウス(オオイヌ座)を従えてきらめいている。寒気の強い晴れた夜の翌朝は快晴になることが多い。日本列島が高気圧に覆われる日が、モルゲンロート(アルプスの朝焼け)に出合える好機だ。
鹿島槍、五竜、白馬三山など北アルプスのモルゲンロートは、複雑な気象条件がそろわなければ出現しない。白銀の峰々がピンク一色に染まる姿は絶景だが、幸運の女神はめったにほほ笑んではくれない。
天気予報を見定めて今冬は4回、小川村のアルプス展望広場に通った。朝4時、前夜見た星座は西の空に巡って来て、オリオンは逆さになって瞬いている。しばらくすると星の光が弱まり、アルプスの稜線(りょうせん)が浮かび上がってきた。5時を過ぎると白い峰々がはっきりしてくる。
振り向くと、反対側の山際が赤く染まり始め、菅平の右手には浅間の煙も見える。日の出が近づいてきた。アルプスの峰々も色づく気配だ。「今日こそ空も山もピンクに染まるぞ」と待ち構えたが、空は少し赤みを増しただけ。それでも陽光が峰々に当たると、山肌は赤く焼けるように輝く。これがモルゲンロートだ。
一瞬というか、わずかなチャンスしかなかった。朝焼けが消えると、白く険しい北アルプス北部の連山は神々が住むと思わせるような高貴な姿を見せていた。
(写真と文・宮本辰雄)