フロント 2010年3月27日
妥協を許さず狛犬を彫る
紙に下絵を描き、それを四角い石の3面に写す。その時作りたい狛犬の頭の大きさや足の太さに合わせた寸法を割り出すのが最初の難関だ。それから、まず機械でおおまかな四角い狛犬を作る「荒取り」、のみで削り出来上がりに近づけていく「荒削り」、細かい部分をのみで少しずつ形作っていく「むしり」と、気の遠くなるような緻密(ちみつ)な作業を続け、約2カ月で一対の狛犬(こまいぬ)が完成する
県内で狛犬を彫るのは数人だけ。その一人が檜山敬司(ひやまけいじ)さん(36)=上松。家業の石材店を継ぐため、高校卒業後、石材加工が盛んな愛知県岡崎市で修業を積んだ。世話になっていた親方の所は狛犬を得意とする彫刻石材店。そこでの経験を生かし、今は現場に出られない冬場に製作している。
子どものころ、おもちゃを分解しては組み立てられずに困っていたという檜山さん。決して手先が器用なわけではないが、「不器用な人間ほど、完成したときの喜びは大きいのかも」。
ひびが入りやすい口やしっぽなど、細かい作業の連続。ただ無心で腕を動かす。そうした末に完成する時は、えも言われぬ満足感に包まれる。
犬に似た想像上の獣の像といわれる狛犬。神社の拝殿の前などに、向かい合わせに置いてある魔よけだ。中国製の安価な狛犬が出回る中、檜山さんの作る日本の伝統的な「顔」に魅了される人は少なくない。縁あって落ち着く先が決まった狛犬は、神社・寺院の入り口で、その役割を静かに全うしている。
たまに自分の作品を見に行くという檜山さん。神社などに出向くと、つい、狛犬に目が行ってしまう。「親方や兄弟子の作った狛犬はすぐ分かるんです。顔や作りの丁寧さを見ればね」
それに比べると、自分は「まだまだです」。しかし、自分の作った狛犬を見て「ピンときた」と喜んでくれる人がいる。その声を励みに、妥協を許さない親方の教えを受け継いだ檜山さんは「これからも丁寧な仕事をするだけ」と笑顔を見せる。
(記事・千野美紀)
(写真・森山広之)