フロント 2010年5月1日
日本の木版画に魅せられ
私にとって木版画の魅力は、「版木」に刻む「ノミ」の線、何種類もの色を「ばれん」の力加減により「和紙」に写し取るという一連の仕事の重なりが、絶妙なハーモニーを作り出し、表現できることにあります。
生活を通じての体験、感動、喜び、悲しみなど、その時々の私の感情が、木版画に版木の表情、線の表情、写し取られた色から作品として表現されます。
不思議なぬくもり、楽しさ、希望、不安など、作品を見る人の主観を通じ、さまざまな感情を感じ取っていただけると思います。
掲載作品は、水草の浮かぶ池の静かな水、左右に形を変えながら流れる水です。路地や庭の敷石に撒(ま)かれる打ち水は辺りの気を清浄にしてくれます。そして、その水の気は、周りにいる人たちをくつろがせてゆきます。打ち水のイメージと、そこで「くつろぐ」イメージが重なりました。
韓国の大学の美術学部を卒業後、日本の浮世絵に触れました。木版画技術は、かつては経典の印刷に使われながら、韓国では技術としては途絶えていました。一方、日本では浮世絵に代表される独自の技術として花開いたことに興味を持ち、1994年に来日しました。武蔵野美術大学大学院や東京芸術大学大学院で、日本の伝統的な多色刷水性木版画を学びました。
縁あって信州に嫁ぎ、信州の自然や景色、人間関係の中で制作した私の表現が、皆さんにどのようにご覧いただけるか大変楽しみです。
(作品と文・朴再英)

朴再英(パクジェヨン)さんプロフィル
1964年韓国で生まれ、千曲市在住。日本版画協会会員。日本美術家連盟会員。87年ソウルの徳成女子大学美術学部東洋画科卒業、98年武蔵野美術大学大学院版画科修了、2001年東京芸術大学大学院版画科修了。07年第75回日本版画協会展準会員最高賞ほか受賞多数。毎年国内各地の画廊で個展、グループ展を行い、韓国でのアートフェアKIAFに連続出品。中国・上海美術館での発表も。