フロント 2009年7月25日
長野の風土に刺激され
子育てが終わったら自分にお金と時間をかけよう-と、ずっと思っていました。そして、いくつか寄り道をしながら巡り合ったのが陶芸です。
陶芸は全身を使います。土をこねる最初の作業の荒練りから菊練りは、全体重をかけてこねないと土が均一になりません。ろくろを回すときは必ず腕をひざに当てて安定させます。自然豊かな長野で跳び回って遊び育ったため、全身で作り上げる陶芸が性に合ったのでしょう。
あるとき、無心に土を練り、ろくろを回していると、私が子どものころにあった味噌樽(みそだる)の形がよみがえりました。箍(たが)のバランスや曲線の美しさが、実際にそこにあるかのように鮮明に思い出されたのです。そのときから “用の美”を追求し、形にしたい、日常生活の中の美しさを表現したい-と考えるようになりました。
また、長野の自然は私に作品のテーマを与えてくれます。志賀高原に行ったときのことです。リフトで上がっていくと、気持ちよい風が吹き、まぶしい光が遠い山の方から差してきました。その光の中でチョウや綿毛がキラキラと舞っていて、別世界に来たかと思うほど感動しました。この風景を、そして美しさを形にしたいと思いました。それが日展の公募展に出品した作品=写真右=です。
私の陶芸づくりの根っこを支えているのは、生まれ育った長野です。そしてこれからも、長野の風土に刺激されて表現していくのだと思います。
(作品と文・町田起代子)

町田起代子さんプロフィール
篠ノ井在住。1998年に陶芸を始める。日展入選。現代工芸富山美術展市長賞、勤労者美術展受賞。北信美術展で2回受賞。2006年、陶芸と裂き織りのコラボレーション(須坂市笠鉾会館)。07年、七人の工芸展(ギャラリー82)。現代工芸美術協会会員、現代工芸長野会会員、信州美術会会員、北信美術会会員