フロント 2009年9月26日

0926-01-01.jpg 山中袈裟嗣さん

桐箱に職人の技込めて

山中袈裟嗣(けさつぐ)さん(65)は、県内でただ一人の桐箱職人。 裾花川や市の指定木1号のケヤキの大木が見渡せる自宅横の工房で黙々と作業に励む。妻科の静かな住宅地にある「山中桐箱店」の店主として、掛け軸や刀、仏像などを納める桐箱を作っている。

生まれた時から、職人である父親の後ろ姿を見て育った。3歳違いの兄の急死により、15歳のころ急きょ跡を継ぐことになり父に弟子入り。4年くらいは木のくぎを削るだけ。箱を作るようになっても「こんなもの使い物になるか」と足で踏まれ、ストーブに放り込まれたことも。「亡くなった父は仕事に厳しかった。でも、あれだけの職人はいない」と言う。

山中さんの作る箱は、ふたを持ち上げても箱が抜け落ちない。端からふたを上げると簡単に開く。これは縁の内側が15ミリほど立ち上がっているためで、ふた側を削ることによりぴたりとはまる。この作業は、職人技が要求されるミクロの世界。気を抜くと緩くなってしまう。削られたかんなくずは、紙より薄く透けて見える。

0926-01-02.jpg

工房には、かんな、のこぎりがずらりと並ぶ。1箱仕上げるのに、かんなは12丁から13丁、のこぎりは5丁ほど使う。桐箱作りのかんなは特殊なため、すべて特注品。箱材は会津の桐にこだわる。

弟子入り希望者は後を絶たない。だが、一人前になるには10年かかる。父親とやっていたころは、夜なべをしてもさばききれない忙しさだったが、最近は需要も減った。「寂しいが仕方ない」と山中さんは言う。

作品は数えきれないが、自分のはもとより父の作品も一目で分かる。今年6月に全国税理士共栄会文化財団の伝統工芸を保存する会から表彰された。「箱作り職人は地味だが、表彰されたことはうれしい」。評価されたことを素直に喜ぶ笑顔に、仕事一途の人生がうかがえる。

(記事・堀 文緒)
(写真・宮本辰雄)

コメント停止中