フロント 2009年11月21日
童心の写し絵 紙粘土人形で
9月に催された県工芸美術会創立展で、篠ノ井の鳥羽桂子さんの創作紙粘土人形作品「収穫」が入選しました。半年かけて完成させた力作です。
晩秋の北信濃は、もうすぐ冬支度。大根を引っこ抜いて尻もちをつくおじいさん。「あらあら、デッカイね」とおばあさん。場面からは、収穫を喜ぶ老夫婦の笑い声が聞こえてくるようです。
バックの水彩画は、鳥羽さんが尊敬する故・麻沼和男さんが描いた飯山市を流れる千曲川の風景です。胸をはだけたおじいさんの骨格や筋肉、動きのある手足をいかに表すかが「一番悩んだところ」と言う鳥羽さん。“裸体の基本”は戸隠在住の彫刻家・桑田弘雄さんに厳しく指導を受けたそうです。
ひところブームだった創作紙粘土人形に出合ったのは30代後半でした。3歳の時に父が戦死。女手一つで農作業をしながら育ててくれた母・うき子さんは、大切な着物をほどき、人形をたくさん作ってくれたそうです。幼かったころの遊びのシーンがよみがえって、帰る場所を見つけた思いの鳥羽さんは3年間、カルチャースクールで夢中で学びました。
以後は独自で創作の世界を展開。1991年、新日本美術院展で受賞したことが励みとなり、バルセロナ市民栄誉賞を受賞しスペインへ。亜細亜美術招待展や長野冬季オリンピックメーンプレスセンターにも出展。近年は漫画家・西沢まもるさんら仲間で「あさぼらけ展」を開催。出品した「源氏物語」「川中島合戦」「アラビアンナイト」は、紙粘土人形とは思えないリアルな表現と、1メートルほどもあるビッグなサイズが見る人を驚かせています。
今回の郷愁あふれる作品には、色あせることのない鳥羽さんの“来し方”の風景が込められ、まるで童心の写し絵のようです。
(作品・鳥羽桂子)
(記事・松原京子)

鳥羽桂子さんプロフィル
1942年長野市生まれ。篠ノ井在住。青山寿、原田仟二、桑田弘雄各氏に師事。88年人形作家として独立。新日本美術院賞・東京都教育委員会長賞(新日本美術院展)、信州新町美術館長賞・バルセロナ市民栄誉賞(新陽展)。信学会シルキースクール講師(94年まで)。市南部働く女性の家講師(2000年まで)。信州アンデパンダン展25回・あさぼらけ展5回出品。ギャラリー・パフィン主宰。※寺島酒店(北長野駅前)特設ギャラリーでのミニあさぼらけ展に展示中。